こんにちは!
今回はインドネシアで成長している訪日旅行の新しいプレイヤーについてご紹介します。
台湾, 中国, タイ市場同様に以下記事の通り, インドネシア市場もFIT化が進んできています。 団体パッケージツアーではなくオンラインやトラベルフェアで格安航空券を購入し, その後に日本国内での移動手段や宿泊施設を予約する。そんなお客様が増えつつあります。
FITとは、団体旅行やパッケージツアーを利用することなく個人で海外旅行に行くこと。Foreign Independent Tourの頭文字の略。Free Individual(Independent)Travelerともいう。
出典:JTB総合研究所 より
【日本政府観光局インバウンド最新リポート 42】インドネシアの訪日旅行 JNTOジャカルタ事務所 大内将太郎 次長
インドネシア人の訪日ピークは、4月の桜の時期、断食明け大祭を意味するレバラン休暇、12月の学校休暇となっているが、近頃は紅葉や雪といった秋冬の魅力についても認知が定着しつつあり、この時期の訪日客数も増加している。旅行形態は、FIT化が進んでおり、ウェブサイトやSNSからの情報収集により旅行先を決め、オンラインやトラベルフェア(旅行商品即売会)において航空券を購入する人が多い。出典:観光経済新聞社 より
そんなマーケットの傾向によって新しいプレイヤーとして台頭してきたのが ”オンライン・ツアーコーディネター” です。インフルエンサーでもなく旅行会社でもない彼らはなんなのか。またなぜ彼らがお客様に選ばれるようになったのか、今回はインドネシアマーケットの新しいプレイヤーを紹介していきます。
オンライン・ツアーコーディネーターとは
彼らを取材するにあたり、当社では彼らをどのような名称でご紹介すべきか悩みました。今回こういった業種の彼らを当社で設定した造語 ”オンライン・ツアーコーディネーター”としてご紹介しています。インフルエンサーでありながらオンライン上で旅行商品を販売し, 実際にお客様を日本に連れて案内をする。インフルエンサー×旅行会社 が融合したような形をとっているのが彼らオンライン・ツアーコーディネーターです。
OTA | オンライントラベルエージェント。インドネシア発のOTAとして Traveloka が台頭。(traveloka.com) |
旅行会社 | ショッピングモール等に旅行店舗を構え, 団体ツアー, FITパッケージ, 航空券を販売。旅行博を自社で単独開催する旅行会社も出てきている。 |
オンライン・ツアーコーディネーター | オーダーメイドのプライベートツアーを得意としている。お客様は基本的に航空券を購入した状態で問い合わせをする。集客方法は主にオンラインでSNSやウェブサイトを通じてお客様にアプローチしている。 |
トラベルインフルエンサー | SNS等で多数のフォロワーを持ち情報の配信をしている。主にブログ等でのアフィリエイト収入やSNS等での広告収入を得ている。 |
彼らの源流を辿れば, 元はインフルエンサーという方がほとんどです。日本に留学経験があるインドネシア人や, 自身の旅行で日本に魅了されインフルエンサーとしてオンライン上で日本の魅力を配信していた人達です。そういった人たちがオンラインの枠を飛び出し, オフラインのビジネスである旅行商品の販売を始めたのがオンライン・ツアーコーディネーターです。
ポイント!
これまでは商品をお客様に認知してもらうには新聞広告やテレビCM, 街中での広告等多額な広告宣伝費を必要としていましたが, SNSの台頭によりお客様へのアプローチがより安くより容易になったことも彼らが活躍できるようになった一つの要因です。
彼らが得意な領域
旅行会社販売の団体ツアー | 15名以上を基準とし, 募集型ツアーとして各店舗で販売しているもの。詰め込み型のもので各観光地でゆっくりできないイメージをお客様に持たれている。 |
団体ツアーと個人旅行の間 | プライベートツアー。家族単位の旅行や身内だけの旅行。 |
個人旅行(FIT) | 航空券は旅行博やOTAで, ホテルはAgoda や Expedia 等のOTAで購入。JR PASS 等の公共交通機関を活用し旅行をする。 |
彼らが得意なのは団体ツアーと個人旅行(FIT)の間の領域 ”プライベートツアー” です。団体ツアーのような他人と一緒で観光地でゆっくりできない詰め込み型のツアーよりももっとゆっくり観光地を観光したい, けれども自分自身だけで公共交通機関を利用しての個人旅行での訪日は心細い。そんなお客様に対し, 彼ら自身が案内をすることによって選ばれるようになってきました。 具体的なお客様層でいうと下記のようなお客様です。
- 若年層の家族旅行
- 日本旅行のリピーター
- 所得中間層
- 民泊などを利用しお得に旅行したいお客様
お客様に選ばれているポイント
日本について詳しい
日本人の私でも驚くような豊富な日本の知識量を持ち合わせています。旅行会社の店舗のカウンターに行っても, 自社商品の説明ができても日本の細かな観光地を説明できるスタッフは少ないです。そんな中, 彼らは留学時の経験や何十回も行った訪日時の経験を元に話ができるのでお客様から選ばれています。
人そのものに惹かれる
旅行会社の販売している商品では販売している”人”のストーリーを読み解くことはできません。オンライン・ツアーコーディネーターの中には, ツアー作成までに自分たちで視察に行き楽しんでいる様子をSNS上に投稿し, 実際にツアーができるまでのストーリーを共有しているものもあります。お客様の中にはそういった彼らのストーリーに惹かれてツアーに参加する方もいます。
旅行会社に比べて安い
取材を進めていくのにあたり, 一番の驚きは彼らが販売している商品の安さです。ゴールデンルートのツアーや関東のみのツアーでも, 旅行会社と比べてより安い料金を提示することもあります。次の章で, より詳しく彼らの安さの秘密に関して説明していきます。
安さの秘密
なぜ長年旅行商品を扱ってきた旅行会社よりも安い価格をお客様に提供できるのでしょうか。この章ではポイント毎に分けてその秘密をお伝えしたいと思います。
ホテルの価格
より多くのボリュームを扱うことにより旅行会社は宿泊施設から安価な料金を提供してもらっています。しかし近年FIT化が進むことにより, 宿泊施設が旅行会社に提示している価格よりもOTAで出ている価格の方が安いことが多くなってきました。オンライン・ツアーコーディネーターはこういったOTAを活用しホテル予約をしています。また彼らの得意な領域がプライベートツアー(10名以下)のため, 旅行会社がホテルから卸してもらっている値段と大差ない料金を獲得できているのです。
ポイント!
OTAの規約の中には転売を禁じているものもあります。彼らの中にはその事を理解した上で, 宿泊施設へあらかじめ了承を得たり, ホテルは提案するのみで予約はお客様自身で予約してもらうようにしています。
ガイド業務委託料
通常, 旅行会社が発注する日本のツアーアテンダントへの業務委託料の相場は 18,000円〜25,000円/日 で, それとは別にお客様の人数に合わせてチップが必要になります。オンライン・ツアーコーディネーターは, 彼ら自身でツアーリーダーとして日本を案内することにより, ガイド業務委託料としてかかるコストを大幅に削減しています。
移動手段
オンライン・ツアーコーディネーターの販売するツアーの多くは, 旅行会社で提供されているようなツアーで利用する貸切バスではなく, 公共交通機関を利用します。”Jalan Jalan Like a Local (日本人のような旅行を)” とキャッチコピーを打ち, 日本人と同じような旅行をしようと呼びかけることもあります。このように, 貸切バスを利用しないことでコストを削減しています。
ポイント!
移動に貸切バスを利用しないことは, 普段インドネシアで運転手付きの自家用車で移動しているようなインドネシア人にとってあり得ないことのように思えます。しかし, オンライン・ツアーコーディネーターは逆にそれを “日本人のような旅行” として, 電車や公共バスで移動する非日常をお客様に楽しんでもらおうとしています。
TOUR KE JEPANG DIONさん へのインタビュー
今回は実際に Tour ke Jepang を運営しているDionさんに話を伺いました。
DIONさんの経歴
2013年に運営サイト(Tourkejepang.wordpress.com) で, 日本での体験を記事にしたブログへのトラフィックが増えたのを機に, 現在は次のような体制で Tour ke Jepang の運営を行なっています。
- ウェブデベロッパー :10名
- コンテンツライター:5名
- マーケティング:5名
- SEO, SEM : 3名
実績
年間で約1,500名(2017年)の送客実績があります。
旅行会社に関してどう考えているか。
「私にとって旅行業においてライバルというのは存在しないと考えてます。価格競争をするのではなくネットワークを活かしお互いに助け合える関係だと考えています。」
これからの展開
ウェブサイトのリニューアルを予定しています。具体的には訪日旅行商品を販売できる e-コマースのような形に変更したいと考えています。私たちはウェブサイトやSNSでの集客にフォーカスし, 日本やインドネシアの訪日旅行商品を販売している旅行会社や関連業者さんに提供してもらった商品を販売する形に変更していきたいと考えています。
オンライン・ツアーコーディネーターの紹介
オンライン・ツアーコーディネーターは大きく分けてウェブサイト系とSNS系があります。どちらも持っている会社又は個人事業主が多いのですがその中でもどちらに力を入れているかで当社の独断で分けてご紹介していきます。
ウェブサイト系
フォロワーは8,000フォロワー以上。彼らは元はカップルでやっているトラベルインフルエンサーでInstagram, Facebook等で自分たちの旅行を紹介していました。日本以外でも,最近は韓国やニュージーランドへの旅行の販売に力を入れています。ハイシーズンには35名以上を引き連れ, 公共交通機関を使っての訪日旅行を行なったこともあります。
@JAPANPRIVATETOUR
インドネシア人以外にも英語圏のお客様も扱っています。高級志向のプライベートツアーを売りにしていて, 現ジャカルタ州知事アニス氏の松山訪問や, インドネシア人なら知らない人はいない女優サンドラ・デウィさんの訪日旅行を手がけたりしました。こういった有名人を活用したPRの甲斐あって, フォロワー数は競合他社と比べても飛び抜けて多く6万人近くいます。
まとめ
インドネシア市場では近年, これまで以上にFIT化によって旅行会社の存在感が低下してきているように思います。旅行会社に営業に行っていれば送客が増えた時代から移行し, 直接一般のお客様へPRをしていかなければ送客が伸び悩む時がくると私たちは考えています。しかし一方で一般の消費者へのPRは多額の費用がかかる上, 送客実績として目に見える成果が出る旅行会社へのアプローチと違って, 成果がわかりにくいのが現状です。そういった一般のお客様へのアプローチやインフルエンサー招致の前に一度オンラインツアー・コーディネーターへのアプローチも検討してみてはいかがでしょうか。当社では記事で紹介したようなオンラインツアー・コーディネーターの招致も提供しております。「こういった取り組みは可能か」などのお問い合わせ・ご相談もお待ちしております。